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導入するメリット、導入するうえでの課題とその対策などをご案内

短時間正社員制度

このページでは

次のことを記載しています。
その内容は、それぞれの所をクリックしてご覧ください。


短時間正社員とは(短時間正社員制度とは)

厚生労働省の短時間正社員制度導入支援マニュアルによりますと、フルタイムで働く正社員(1週間の所定労働時間が40時間程度で、期間の定めのない労働契約を締結した社員)と比較して、1週間の所定労働時間が短い正社員のことで、次のいずれにも該当する社員のことを言う、とされています。

  1. 期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結していること。
  2. 時間あたりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が、同種のフルタイム正社員と同等であること。
     

短時間正社員制度を導入している企業の事例をみますと、今までは、育児や介護を行うフルタイム正社員の仕事との両立支援を目的とするものが多かったのですが、近年、人口減少、少子高齢化という人手不足の時代を迎える中で、「多様な働き方、働く人の個々のニーズに応じた柔軟な働き方ができる制度」、「人材の確保・定着の取組みとして活用できる制度」として注目されています。

又、短時間正社員制度は、前述しました調査結果、
「求職者が仕事を探すうえで重視することや希望すること、
具体的には

  • 若者は : 「ワークライフバランス」
  • 女性は : 「残業がない又は少ないこと」、「短時間勤務や希望する時間、日数だけ働けること」など
  • 高齢者は : 「1週間あたりの勤務日数が少ないこと」、「1日に働く時間が短いこと」など

に対応した制度」だとも言えます。

短時間正社員制度を導入するメリット

  • 新たな人材確保の効果が期待できる。

    具体的には、

    「短時間正社員という求人条件」で求人募集することによって、

    ・ワークライフバランス重視の若者

    ・育児等のためフルタイムで働くことは難しく、短時間勤務等を希望する女性

    ・介護、健康上の理由等のため、希望する時間、日数だけ働くこと等を希望する高齢者

    など、多様な人材の確保につながる可能性が高くなる、ということです。

    (その理由)
    前述の「求職者が仕事を探すうえで重視することや希望すること」の調査結果によります。

     
  • 育児、介護、病気等を理由とする離職防止の効果が期待できる。

    (その理由)
    現在、性別にかかわらず、育児や介護など何らかの事情や制約を抱えながら働く人が増えているからです(広島県の働き方改革取組マニュアル・事例集より)。

    又、労働者が治療と仕事を両立するうえで必要だと感じる支援として、「体調や治療の状況に応じた柔軟な勤務形態」が1位(47.8%)となっている調査結果(厚生労働省の「治療を受けながら安心して働ける職場づくりのために」2014年)があるからです。

     
  • 社員のモチベーションアップ、定着率向上の効果が期待できる。

    何らかの事情や制約上、短時間勤務又は短日勤務(労働日数の短縮)のままでしか働くことができない又は働くことを希望するパートタイム労働者等に短時間正社員に転換できる制度を作ることにより、パートタイム労働者等のモチベーションを向上させる効果が期待できます。又、パートタイム労働者等の定着率の向上も期待できます。

    (その理由)
    厚生労働省の「パートタイム労働者総合実態調査(平成23年)」によれば、継続就業を希望するパートタイム労働者の22%が正社員になりたいと回答している(厚労省の短時間正社員制度導入支援マニュアルより)からです。

     
  • 無期転換ルールに対応できる。

    労働契約法が改正され、有期労働契約が通算で5年を超えて更新された場合には、有期契約労働者からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換される、という無期転換ルールが2018年4月1日からスタートしています。

    この無期転換ルールが制定された目的は、雇止めによる不安を解消し、働く人が安心して働き続けることができるようにするということですが、

    近年、何らかの事情や制約上、短時間勤務や短日勤務等でしか働けないという人が増えている状況をふまえて、この無期転換ルールの選択肢の一つとして、短時間正社員という雇用形態を制定し、働き方に制約がある社員が働け続けやすく、しかも、正社員である、という道を用意しておくと、無期転換ルールに対応できるだけでなく、社員のモチベーションアップ、優秀な人材の定着を図ることができるという効果も期待できます。

導入するうえでの課題とその対策

短時間正社員制度を導入するうえでの課題としては、次のことが挙げられます。

そして、その対策として行うことをお勧めする方法、事例が、次のことです。

 

課題

制度利用者のライフスタイルに合わせて勤務時間パターンを選択できるようにするなどして、制度を利用しやすくすることが必要となる。

その対策

前述しました調査結果にもありますように、育児、介護、ワークライフバランス、通院、健康上の理由、高齢のためなど、短時間勤務又は短日勤務を希望する理由や制約には様々なものがあります。

従って、せっかく制度を作ってもそのメリットを感じてもらえなかったり、利用しづらかったのでは、短時間正社員制度を導入した効果はあまり期待できなくなります。

そこで、その対策として、

次のような種々の勤務時間パターンを設定してその中から社員のニーズに応じて選択できるようにする、ということが必要となります。

例えば、次のような事例、方法がありますので、その中から企業の状況に応じて設定されてみてはいかがでしょうか。
 

  • 1日の始業時刻、終業時刻などを次のように複数設定し、その中から選択できるようにすること。

始業時刻

終業時刻 休憩時間 休日

〇時〇〇分

〇時〇〇分 〇時〇分~〇時〇分
まで
〇曜日、〇曜日
△時△△分 △時△△分 △時△分~△時△分
まで
△曜日、△曜日
□時□□分 □時□□分 □時□分~□時□分
まで
□曜日、□曜日
  • 1週間の勤務日数を選択できるようにすること。
     
  • 土、日、祭日だけの勤務日数とすること。
     
  • 午前か午後のいずれか4時間勤務とすること。
課題

短時間正社員周囲の社員が「お互い様」だと思えるような制度とするため、導入目的や対象者を限定しすぎないようにすることが必要となる。

その対策

短時間正社員制度を導入しても業務の遂行に支障が生じないようにするためには、短時間正社員周囲のフルタイム正社員の理解や協力(仕事の補完、フォロー体制)は欠かせません。

そして、フルタイム正社員の理解や協力を得るための対策の一つとしては、

短時間正社員制度は、フルタイム正社員も利用できる制度(或いは、いつかは利用する制度)、つまり、「お互い様」だと思ってもらえるような制度とする必要があります。

そのためには、導入目的や対象者を限定しすぎないようにすることが必要となります。

前述しました調査結果や厚生労働省、広島県等の資料によりますと、短時間正社員という働き方を希望する人、理由、制約、事情には、次のように様々なものがあります。
 

  • 個人の生活と仕事を両立させた働き方を重視する若い年齢層の求職者
  • 育児・介護等と仕事を両立させた働き方を希望するフルタイム正社員や求職者
  • 高齢や健康上の理由のため短時間勤務又は短日勤務で働きたいフルタイム正社員や高年齢層の求職者
  • 自己啓発やボランティア活動と仕事を両立させた働き方をしたいフルタイム正社員
  • キャリアップを目指すパートタイム社員等
  • 治療と仕事を両立させた働き方をしたいフルタイム正社員
  • 定年後、短時間正社員という働き方を希望するフルタイム正社員


従って、短時間正社員という働き方を希望する人、理由、制約、事情には、このようなものがあるということをふまえて、企業の事情や状況に応じて、導入目的や対象者を限定しすぎないように制度設計されることをお勧めします。

課題

短時間正社員の仕事の補完はどうするか、仕事の進め方等を検討する必要がある。

その対策

短時間正社員は、フルタイム正社員に比べて遅く出社したり、早く退社するという、短い勤務時間の中で働き、しかも、基本的には、残業や休日出勤は行わない、という働き方をするわけですから、フルタイム正社員に比べて対応できる仕事量が少なくなったり、突発的なことや繁忙期等に対応することが難しくなったりすることが考えられます。

従って、業務を行っていくうえで支障が起きないようにするため、短時間正社員が不在の時(出社していない時間、或いは、退社している時間)や突発的なこと等が起きた時にも対応できるような仕組み、体制にしておく必要があります。
 

そこで、その対策として行うことをお勧めするのが、次のことです。

  • 「一業務複数名担当制」と「業務のマニュアル化」を行う。


    「一業務複数名担当制」とは、

    一つの業務又はクライアントを短時間正社員1人が担当するのではなく、一つの業務又はクライアントを短時間正社員を含む2人以上の複数の社員が担当したり、或いは、短時間正社員を含むチームを組んで担当したり、短時間正社員のみのチームを組んで担当するという仕事のやり方です。

    複数名、或いは、チームを組んで担当することにより、短時間正社員が不在の時でも、或いは、突発的なこと等が起きた時でも対応することが可能となります。


    そして、この一業務複数名担当制を進めていくうえで必ず必要となるのが、「業務のマニュアル化」です。

    「業務のマニュアル化」とは、

    業務内容やその業務に必要な情報・知識・スキル、仕事のやり方・進め方、作業手順、対応方法、注意するポイントなどをマニュアルにしておき、そのマニュアルを見れば、短時間正社員が不在の時でも、或いは、突発的なこと等が起きた時でも、誰かが(例えば、他のメンバーや所属長・上司)その業務又はクライアントに対して対応できるようにする、という仕組みのことです。

    詳しくはこちら

     
  • 情報の共有化・見える化を行うと共に、コミュニケーションが十分とれるようにする。


    具体的には、次の方法・事例があります。


    ・前述しました「業務のマニュアル化」を行う。

    ・前述しました職場のルールブックを活用して、「報告、連絡、相談及び引継ぎ」に関する指導や研修を行う。

    ・会議や研修、打合せ等の時間を、短時間正社員の勤務時間内で設定する。

    ・短時間正社員、短時間正社員と共に業務を担当する社員、所属長、上司の間で業務の進捗状況を確認する仕組みを作る。

    ・業務関係のメールは、すべてメンバー全員や上司にもわかるようにしておく。

    ・メンバー全員のスケジュールがわかるようにしておく。

    ・事前にわかっていることは、早めに伝えるように指導や研修を行う。

    ・短時間正社員が不在の時(出社していない時間、或いは、退社している時間)は、誰がその業務を補完するのか、業務分担を明らかにしておく。 
課題

業務を行っていくうえで支障等がおきないようにするため、短時間正社員及び周囲の社員への仕事の配分の調整等が必要となる。

その対策

短時間正社員は、フルタイム正社員に比べて短い勤務時間の中で働くわけですから、フルタイム正社員に比べて対応できる仕事量は少なくなることが考えられます。

従って、業務を行っていくうえで支障が起きないようにするため、或いは、短時間正社員が継続的に業務を続けていく意欲を持ち続けられたり、決められた時間どおりに退社できるようにするため、

更には、短時間正社員周囲の社員が短時間正社員の仕事の補完やフォローをしている場合は、特定の社員だけにその負担が集中したり、負担が過度のものにならないようにするため、短時間正社員及び周囲の社員への仕事の配分の調整等が必要となります。


そこで、その対策として行うことをお勧めする方法や事例が、次のことです。

  • 短時間正社員への仕事の配分は、

    「仕事量は減らしても、仕事内容や責任の範囲は下げない」ということを基本とします。

    つまり、
    仕事内容については、短時間正社員がそれまで担っていた役割(或いは、短時間正社員として採用された社員に求める役割)や持っているキャリア、スキル、能力に応じた仕事内容を配分する。

    仕事量については、短時間正社員の勤務時間の中で取組み可能な仕事量とする、ということです。

    (そのようにする理由)

    短時間正社員に配慮するあまり、それまで担っていた役割(或いは、求める役割)や持っているキャリア、スキル、能力に対し、低い役割レベルの仕事や補完的な仕事、単調な仕事ばかりを与え続けると本人のキャリアアップ意欲をそいだり、モチベーションの低下につながったりするばかりでなく、就業継続の意欲をそぐことにもなる可能性があるからです。

    但し、職場の状況、事情によっては、現在の職場では短時間正社員にそれまで担っていた役割を与えることができない場合は、短時間正社員の希望をふまえて異動や配置転換を行うことを検討する必要があります。

     
  • 短時間正社員周囲の社員への仕事の配分は、

    特定の社員だけにその負担が集中しないようにするため、一つの業務又はクライアントに対して2名以上の複数名、或いは、チームを組んで担当すると共に、その業務分担を明らかにする。

    又、負担が過度のものにならないようにするため、担当の職務内容を見直す。

    更に、既に負担が過度のものとなっている場合は、部、課、係を超えた仕事の配分調整や追加人員の配置を行う。

     
  • 短時間正社員や周囲の社員への仕事配分が適正か、前述しました「労働時間管理簿」や「業務の進捗状況を確認する仕組み」をとおして確認すると共に、社員への聞き取り調査を行う。

     
  • 短時間正社員が決められた時間どおりに退社できているかの確認を、「労働時間管理簿」や短時間正社員、所属長・上司への聞き取りによって行う。

     
  • 前述しました「業務のマニュアル化」、「情報の共有化・見える化」を行うと共に、コミュニケーションが十分とれるようにする。

     
  • 一業務複数名担当制で業務を行う場合は、短時間正社員、周囲のフルタイム正社員、所属長・上司がそれぞれ分担する仕事を明確にする。
課題

一般のフルタイム正社員及び制度利用者周囲のフルタイム正社員が不公平感を持たないような又、制度利用者のモチベーションが低下しないような待遇、人事評価の設定が必要となる。

その対策

短時間正社員の待遇(基本給、諸手当、賞与、退職金など)や人事評価(目標設定、評価、昇進・昇格など)の設定をするうえでは、フルタイム正社員と同じ取扱いとするもの、異なる取扱いとするものを整理し、フルタイム正社員とのバランスをとることが必要となります。

具体的には、仕事の内容や責任の違いに基づかない不合理な差があれば、同一労働同一賃金の問題が生じたり、短時間正社員のモチベーションが低下したり、或いは、制度利用をためらったりする可能性があります。

一方、
フルタイム正社員が会社の指示によって時間外労働や休日労働をたびたび行ったり、突発的なことやトラブルなどに頻繁に対応したりしている場合や制度利用者周囲のフルタイム正社員が制度利用者の仕事をカバーしている場合は、

そのことを考慮した待遇や人事評価をしないと、一般のフルタイム正社員や制度利用者周囲のフルタイム正社員の納得は得られず、更には、不公平感を感じたり、制度利用についての不平、不満を持ったりする可能性があります。

従って、その対策として、

短時間正社員の待遇、人事評価を設定するうえでの基準となるものを示したものが厚生労働省の短時間正社員導入支援マニュアルに次のようにありますので、その基準を目安として企業の事情や状況に応じて短時間正社員の待遇、人事評価の設定を検討されることをお勧めします。


厚生労働省の短時間正社員導入支援マニュアルに示されている待遇、人事評価の基準に基づく
提案(たたき台)は、こちら

課題

短時間正社員のルールを明確にしておくため、就業規則の作成又は変更が必要となる。

その対策

短時間正社員制度を導入するうえで必ず行わなければならないことは、フルタイム正社員やパートタイム労働者等の有期契約労働者との基本給などの待遇や勤務時間などの違いを明らかにした労働条件等のルールを就業規則に明文化しておくことです。

なぜなら、その違いを明らかにし、就業規則に明文化しておかないと、フルタイム正社員の基本給などの待遇が短時間正社員にもそのまま適用されると解釈されたり、或いは、使用者と労働者の考え方、受け止め方の違いからトラブルになる可能性もあるからです。

従って、短時間正社員に適用される就業規則には、次のことを明らかにし、明文化しておく必要があります。

  • 適用範囲

    つまり、その短時間正社員用の就業規則によって適用される労働者の範囲を明らかにしておく必要があるということです。

    例えば、

    ・新たに短時間正社員という採用枠で入社した社員に適用する。

    ・フルタイム正社員やパートタイム労働者などから短時間正社員に転換された社員に適用する。

    という具合です。
     
  • 転換手続き

    つまり、短時間正社員からフルタイム正社員に転換、或いは、復帰する場合の手続きについて明らかにしておく必要があるということです。

    尚、短時間正社員になるための手続きについては、フルタイム正社員に適用される就業規則やパートタイマー等に適用される就業規則にそれぞれ定めておく必要があります。

    その規定例としては、厚生労働省の短時間正社員就業規則(ひな型)等に次のように記載されていますので、その規定例を目安や参考にして企業の短時間正社員制度の内容に応じて定めておくことをお勧めします。


    [フルタイム正社員に適用される就業規則における規定例]

    1.次のいずれかの事由により短時間正社員となることを希望する者は、会社にその旨を申し出ることができる。

    ・子供の養育のため
    ・家族の介護のため
    ・自己啓発のため
    ・地域活動やボランティア活動のため
    ・健康上の理由でフルタイム勤務が難しい場合
    ・その他会社が認めた場合

    2.第1項の規定により申出があった場合、会社は原則として申出日より〇か月以内で期日を指定してその労働者を短時間正社員とする。


    [パートタイマー等有期契約労働者に適用される就業規則における規定例]

    規定例1

    ・パートタイマー及び臨時職員のうち、短時間正社員への転換を希望する者は、短時間正社員登用試験に合格した場合、短時間正社員となることができる。



    規定例2

    ・〇〇社員として〇年以上継続勤務し、その後、短時間正社員への転換を希望する者について、所属長の推薦がある場合には、会社は転換試験を実施し、合格した者について短時間正社員に転換する。

    2.前項の転換試験は、毎年〇月末日までに所属長の推薦状を添付した本人の申込書を受け付けて、原則として翌年〇月に実施し、その合格者について〇月〇日付で転換する。



    ※転換条件としては、「勤続年数」、「上司の推薦」、「転換試験」、「勤務成績」等が考えられる、
    とされています。

     
  • 労働時間、休憩時間、休日

    これらのことについては、フルタイム正社員やパートタイム労働者等の有期契約労働者と異なる部分について、具体的に明らかにしておく必要があります。

     
  • 時間外・休日労働

    これらのことについては、短時間正社員には時間外・休日労働を命じないという規定にするか、
    或いは、時間外・休日労働を命ずる場合は、本人の同意を必要とする旨の規定にするか、明らかにしておく必要があります。

     
  • 年次有給休暇

    フルタイム正社員やパートタイム労働者から短時間正社員になった場合、年次有給休暇の付与日数(その労働者が1年間に年次有給休暇を取得できる日数)は、変わる可能性があります。

    従って、次のことを就業規則に明文化しておく必要があります。

    1.付与日数はどう変わるのか(付与日数の違い)

    2.付与日数はどの時点で変わるのか(付与日数を変更する時点)

    なぜなら、このことを就業規則に明文化しておかないと、フルタイム正社員の年次有給休暇日数が短時間正社員にもそのまま適用されると解釈されたり、或いは、使用者と労働者の間の受け止め方や考え方の違いからトラブルになる可能性もあるからです。


    1.[付与日数はどう変わるのか(付与日数の違い)ということについて]

    年次有給休暇の法定付与日数は、その労働者の働き方、つまり、その労働者の所定労働時間と所定労働日数によって、次のように労働基準法に定められています。

    「通常勤務労働者の付与日数」

    具体的には、週の所定労働時間が30時間以上又は週の所定労働日数が5日以上又は年間の所定労働日数が217日以上の労働者の場合の付与日数は、次のようになります。

     
    雇入れの日から起算した
    継続勤務期間
    6か月 1年
    6か月
    2年
    6か月
    3年
    6か月
    4年
    6か月
    5年
    6か月
    6年
    6か月
    以上

    付与日数

    10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日


    従って、このことをふまえて、就業規則には次のように明文化します。

    [厚労省のモデル就業規則の規定例を参考にしたもの]

    第〇条
    採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、10日の年次有給休暇を与える。
    その後1年間継続勤務するごとに、その1年間において所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、前述の表のとおり継続勤務期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。


    短時間勤務労働者の付与日数」

    具体的には、週の所定労働時間が30時間未満で、かつ、週の所定労働日数が4日以下又は年間の所定労働日数が216日以下の労働者の場合の付与日数は、次のようになります。
     
    週の
    所定労働日数
    1年間の
    所定労働日数
    雇入れの日から起算した継続勤務期間
    6か月 1年
    6か月
    2年
    6か月
    3年
    6か月
    4年
    6か月
    5年
    6か月
    6年
    6か月
    以上
    4日 169日~
    216日
    7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
    3日 121日~
    168日
    5日 6日 8日 9日 10日 11日
    2日 73日~
    120日
    3日 4日 5日 6日 7日
    1日 48日~
    72日
    1日 2日 3日

    ※(注意)
    短時間勤務の方でも、週の所定労働時間が30時間以上の方(例えば、1日8時間労働者で週4日勤務の方)、
    又は、週の所定労働日数が5日以上の方(例えば、1日4時間で週5日勤務の方)は、
    前述の通常勤務の労働者と同じ日数の休暇を与えなければなりません。


    従って、このことをふまえて、就業規則には、次のように明文化します。

    [厚労省のモデル就業規則の規定例を参考にしたもの]

    第〇条2項
    前項の規定にかかわらず、週の所定労働時間が30時間未満であり、かつ、週の所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については、年間の所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、前述の表のとおり週の所定労働日数及び継続勤務期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。



    2.[付与日数はどの時点で変わるのか(付与日数を変更する時点)ということについて]

    年次有給休暇の付与日数は、年次有給休暇を取得する権利が発生した日(つまり、※「基準日」)の所定労働日数・所定労働時間又は1年間の所定労働日数によって決まります(或いは、変わります)。

    ※基準日とは、
    年次有給休暇を取得する権利が発生した日のことであり、その労働者を採用した日から6か月経過した日、その後は、1年ごとの日(つまり、1年6か月、2年6か月、3年6か月、4年6か月、5年6か月、6年6か月を経過した日のこと)のことを言います。

    従って、それぞれの基準日時点の週所定労働日数又は1年間の所定労働日数に応じた前述の表の休暇日数を付与すればよい、ということになります。

    つまり、年次有給休暇の付与日数は、前述の基準日の時点で決まる(或いは、変わる)ので、基準日より前に所定労働日数や所定労働時間が変更されたり、基準日が過ぎた後に所定労働日数や所定労働時間が変更されたとしても、その変更された時点で年次有給休暇の付与日数を変える必要はない、ということです。

    従って、このことをふまえて、就業規則には、次のように明文化します。

    [規定例]

    第〇条3項
    第1項及び第2項の年次有給休暇の付与日数は、その労働者を採用した日から6か月経過した日、その後は、1年ごとの日(つまり、1年6か月、2年6か月、3年6か月、4年6か月、5年6か月、6年6か月を経過した日)の週の所定労働日数及び週の所定労働時間又は、1年間の所定労働日数に応じた日数の年次有給休暇を与える。

     
  • 基本給、諸手当、賞与、退職金

    これらのことについては、前述しました厚生労働省の短時間正社員導入支援マニュアルに示されている待遇についての基準、つまり、「基本給の決め方の基準」、「諸手当の決め方の基準」、「賞与の決め方の基準」、「退職金の決め方の基準」を目安として又、次の厚生労働省の規定例を参考にして企業の事情や状況に応じて設定、明文化されることをお勧めします。

    [厚労省の規定例]

    「賃金」
    短時間正社員の賃金については、正社員(フルタイム正社員)の所定労働時間に対する短時間正社員の所定労働時間の割合に応じて、基本給、〇〇手当、△△手当を支給する。

    通勤手当は、所定労働日数が1月に〇日以上の場合は、1か月通勤定期券代を支給し、1月に〇日未満の場合は、1日あたりの往復運賃に出勤日数を乗じた金額を支給する。


    「賞与」
    賞与は、正社員(フルタイム正社員)の所定労働時間に対する短時間正社員の所定労働時間の割合に応じて支給する。

    「退職金」
    退職金算定の際の勤続年数の計算にあたっては、通常の正社員(フルタイム正社員)として勤務した期間に、短時間正社員として勤務した期間を通算する。


     
  • 健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の加入


    [健康保険、厚生年金保険の加入について]

    健康保険と厚生年金保険の加入については、1日又は1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が通常の労働者(フルタイム正社員)の4分の3未満の短時間勤務や短日勤務になった場合、健康保険や厚生年金保険には加入しなくてもよいのではないかと思われるかと思いますが、

    厚生労働省は、短時間正社員については、労働時間や労働日数とは別の次の基準を示しています。

    つまり、具体的には、次の3点を満たし、かつ、就労実態も就業規則等の諸規定に則している場合は、健康保険、厚生年金保険が適用される、としています。

    1.就業規則等に短時間正社員に係る規定がある。

    2.期間の定めのない労働契約が締結されている。

    3.時間あたりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が同一の事業所に雇用される同種のフルタイム正社員と同等である。


    従って、短時間正社員については、パート労働者等の有期契約労働者との違いを明らかにしておくため、就業規則に明文化しておく必要があります。


    [雇用保険の加入について]

    雇用保険の加入については、1週間の所定労働時間が20時間以上、かつ、6か月以上引続き雇用されることが見込まれる場合は、適用されます。


    [労災保険の加入について]

    労災保険の加入については、雇用形態、所定労働時間に関係なくすべての労働者に適用されます。


    従って、これらのことをふまえて、就業規則には、次の厚生労働省の規定例を参考にして明文化しておくことをお勧めします。


    [厚労省の規定例]

    「社会保険、労働保険の加入」

    1.短時間正社員には、健康保険、厚生年金保険及び労災保険が適用されるため、会社は必要な手続きを取る。

    2.雇用保険の被保険者に該当する短時間正社員については、会社は必要な手続きを取る。
課題

短時間正社員制度のルールブックを作ったり、説明会、研修会を繰り返し実施するなどして、制度の周知・理解促進、制度への協力を図ることが必要となる。

その対策

短時間正社員制度を導入しても業務の遂行に支障が生じないようにするためや制度の定着を図るためには、短時間正社員は無論のこと、短時間正社員周囲の管理職員・社員の理解や協力は欠かせません。

そして、その理解や協力を得るためには、導入する前には必ず、或いは、導入した後も随時、制度の内容に関すること、

つまり、導入目的、対象者、メリット、賃金などの待遇、人事評価、仕事の配分、業務の効率化、情報の共有化に関すること等を短時間正社員制度利用希望者・予定者、短時間正社員、管理職員、短時間正社員周囲の社員、その他の社員に分けて、それぞれ周知、啓発することが必要となります。

なぜなら、制度の内容を知らないことにより、制度利用希望者・予定者の制度を利用することへの不安やためらい、短時間正社員と周囲の管理職員・社員とのトラブル、コミュニケーション不足や、周囲の社員などの制度や制度利用者に対する誤解や不公平感、不平不満等が生じたり、管理職員による不適切な仕事配分、人事評価等が行わたりする可能性があるからです。

周知、啓発する内容

制度利用希望者・予定者、短時間正社員に対しては、次のことを周知、啓発します。

  • 制度導入の目的
  • 制度の対象になる人、制度が適用される事由、制度が適用される期間
  • メリット
  • 勤務時間又は勤務日数、休日、休暇
  • 基本給・諸手当・賞与・退職金の考え方・算定方法、人事評価の考え方
  • 仕事の進め方、業務の分担に関すること
  • 管理職員や周囲の社員への報告、連絡、相談、引継ぎに関すること
  • 相談窓口に関すること
  • 制度を利用する場合の手続き
     

管理職員に対しては、次のことを周知、啓発します。

  • 制度導入の目的
  • 制度の対象になる人、制度が適用される事由、制度が適用される期間
  • メリット
  • 短時間正社員の勤務時間又は勤務日数、休日、休暇
  • 短時間正社員及び周囲の社員の基本給・諸手当・賞与・退職金の考え方・算定方法
  • 短時間正社員及び周囲の社員への仕事の配分の考え方・方法
  • 短時間正社員及び周囲の社員への人事評価の考え方・方法
  • 短時間正社員及び周囲の社員の労働時間管理の方法
  • 業務の効率化、仕事の進め方、業務の分担に関すること
  • 短時間正社員及び周囲の社員との報告、連絡、相談、引継ぎに関すること
  • 相談窓口に関すること
  • 制度利用手続きに関すること
     

短時間正社員周囲の社員及びその他の社員に対しては、次のことを周知、啓発します。

  • 制度導入の目的
  • 制度の対象になる人、制度が適用される事由、制度が適用される期間
  • メリット
  • 短時間正社員の勤務時間又は勤務日数、休日、休暇
  • 短時間正社員及び周囲の社員の基本給・諸手当・賞与・退職金の考え方・算定方法
  • 短時間正社員及び周囲の社員への人事評価の考え方
  • 仕事の進め方、業務の分担に関すること
  • 管理職員や短時間正社員との報告、連絡、相談、引継ぎに関すること
  • 相談窓口に関すること
周知、啓発する方法

次の方法、事例がありますのでご紹介させていただきます。

  • 次のことについて、前述しました「職場のルールブック」を作成し、活用する。

    ・「短時間正社員制度の内容及びその運用ルール」

    ・情報の共有化及びコミュニケーションに関すること、
    つまり、「報告、連絡、相談、引継ぎ」に関すること

    ・業務の効率化及び仕事の進め方に関すること、
    つまり、「業務のマニュアル化と一業務複数名担当制」に関すること

     
  • Q&A集やパンフレットを作成し、活用する。
     
  • 企業のホームページや社内報、社内一斉メールに制度の内容やその運用ルール、制度利用者の紹介や声を随時、発信・掲載する。
     
説明会、研修会の方法、対象者、時期
  • 短時間正社員という求人条件で採用する場合は、求職者に対して求人説明会・セミナーの時に説明する。
     
  • 新入社員に対しては、新入社員研修会の時に説明する。
     
  • 短時間正社員制度利用希望者・予定者に対しては、個別に説明を行う。
     
  • 短時間正社員、管理職員、短時間正社員周囲の社員、その他の社員に対しては、導入前には必ず、そして、導入した後も随時、説明会や研修会の対象者をそれぞれに分けて実施する。

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柳田 健二
資格
  • 1996年 行政書士資格                取得
  • 2009年 社会保険労務                士資格取得

親切・丁寧な対応をモットーとしておりますのでお気軽にご相談ください。